一刻を争う状態の患者が対象の「ICU」

患者の生命を支える場所
ICU(集中治療室)は重症患者を24時間体制で治療・管理する医療の最前線です。ICUに入院する患者は呼吸不全や心不全、脳腫瘍、肺がんや食道がんなど、生命を脅かす状態にあるケースが多く、容態の変化が激しいのが特徴です。そのため、ICUで働く看護師には知識や技術だけでなく、豊富な経験や対応力、高いアセスメント能力などが求められています。
看護師の主な業務
まずは手術前後の受け入れ準備と搬送対応です。具体的には、手術を終えた患者をICUで受け入れる際に必要な酸素ボンベや点滴、心電図モニターなどの機材の準備、手術室へ送り出す際に必要な物品や書類を準備、搬送の補助なども含まれます。高度な医療機器を扱う機会も多いため、操作にも習熟していなければなりません。
また、綿密なモニタリングと状態観察も看護師の仕事です。ICUでは心電図モニターや人工呼吸器などを用いて、患者の様子を観察しています。モニタリングは意識のない患者の状態を把握する唯一の手段です。そのため、わずかな変化も見逃さず、異常を早期に察知して迅速に対応する力が求められます。
他にも、気管内吸引や傷口の消毒、薬用塗布、カテーテルの挿入などの処置も行っています。緊急度の高い場面では外科的処置に近い対応を求められることもあるため、迅速に対応できるよう、器具を常備しておく必要があります
日常生活のケアも看護師の仕事の1つ
ほとんどの患者は寝たきりの状態です。昼夜のリズムが崩れてしまうため、決まった時間に部屋を明るくしたり、食事・排泄ケアを適切に行うなどして、生活リズムを整えることも看護師の仕事です。重症度の高い患者にとってADL(日常生活動作)を維持することはとても大切です。状態の回復にも大きく影響するため、看護師は細やかにサポートしていかなければなりません。
また、家族の心理面のケアも看護師の大事な仕事です。突然の入院で落ち着かないことに加えて、面会制限があり会いたくても会えないので、家族は大きな不安を抱えることになります。看護師は患者の状態を丁寧に説明し、安心できるようにサポートしていきます。
ICUで働くには
ICUは生命の危機に直面している患者ばかりなので、わずかなミスが患者の生命を脅かす可能性があります。知識や技術だけでなく、豊富な臨床経験と判断力が重視されるため、病棟での実務経験(3年以上など)といった条件を提示している医療機関も少なくありません。資格は必須ではありませんが、一次救命処置(BLS)、二次心肺蘇生法(ACLS)、病院前外傷教育プログラム(JPTEC)、クリティカルケア認定看護師などの資格を取得していれば、キャリアアップにも役立ちます。